「価値」はどこにある
金継ぎをしていると「金継ぎするほど価値のあるものじゃないので」や「せっかく直すなら良いものでないと」という言葉を耳にすることがあります。
価値を高めるために、わざと美術品を割って直す、ということまで言われることもあります。
確かに金継ぎは、もともと茶道具や有名な骨董品など、高価なものに使われる技法でした。
しかし、値の張るものだから大切にする、というのはどこかもの悲しさを感じます。
ものの「価値」というのは、値段や名にあるのでしょうか。
値段や名に関係なく、どんなものにも「価値」があり、その人にとって大切にする理由があると思っています。
「この世界は誰かの仕事でできている」というCMの言葉を思い出します。
誰かの仕事なのに、直す価値のないものなんて、この世にあるのでしょうか。
日々直していると、ついそんなことを考えてしまいます。
「直してでも使いたい」そう思えるのであれば、どんなものでも、直して良いのではないかと。
最近は日常のうつわを直して使う方も増えてきました。
しかしそれでも、やはり直すなら高価な骨董品や美術品でないと、という方もいらっしゃいます。
申し訳ございませんが、わたしはあまりにも高価な骨董品や美術品のお直しは、お断りしております。

技術的なこともありますが、わたしは暮らしに寄り添いたい。

一見価値のなさそうなものこそ直したい。

高価な骨董品や美術品を専門に直す方もいらっしゃるかと思いますので、ご希望の方はそちらをお訪ねいただけたらと思います。

何卒ご理解ください。