金継ぎは直す手段

 

 たまに「金継ぎしたいからうつわを割ろうかな」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

どうか、そのようなことはやめてください。

古いものでも新しいものでも、どんなうつわであれそのうつわを作る方は、それを作ってごはんを食べていらっしゃる方です。

命をかけて作っていらっしゃいます。

金継ぎはあくまで、うつわを直す手段です。

壊れて悲しいから直すのです。直すために壊すのは、本末転倒です。

 

金継ぎはしばしば「より芸術的になる」とか、「付加価値がつく」とか、「生まれ変わる」とよく言われます。

 確かにそれも、金継ぎの一面の1つでしょう。

しかし、それはあくまで「結果」であって「目的」ではありません。

壊れて悲しいから直し、その結果美しく引き立てられるのだと、わたしは思います。

芸術性や付加価値を目的に壊し、直すのは本末転倒で、きっと真に美しくはないでしょう。

 

この世界は誰かの仕事でできています。

その仕事を故意に壊すことは、どうかやめてください。

ありがたいことに、わたしはうつわを直すことで生かしていただいております。

とはいえ、どんなものでも壊れないのが一番ですから、どうぞ大切にうつわとの暮らしを楽しんでいただいて、いざという時には金継ぎという手段を思い出していただけたら幸いです。